要点
- フィナステリドはPSAを低く見せるため、健診では薬の名前・量・飲み始めた時期を先に伝えてください。
- 下がる幅: 40~60歳の男性が1mgを48週飲んだところ、PSAの中央値は40~50%下がりました。
- 時期: 韓国の診療記録の研究では、飲み始めて3~6か月でも26%下がっていました。
- 服用中に低い値から再び上がったと確認された場合は、基準範囲内でも泌尿器科での確認が必要です。
フィナステリド1mgを毎日飲むと、PSA(前立腺特異抗原)の値はおよそ4~5割低く出ます。健康診断では服用中であることと飲み始めた時期を伝え、服用中に下がった値から再び上がっていないかを見ることが大切です。
薄毛治療薬でPSAが低く出るしくみ
薄毛治療薬でPSAが低く出るしくみ
フィナステリドは、男性ホルモンのテストステロンがDHT(ジヒドロテストステロン)に変わる働きを抑える薬です。この変換を担う2型5α還元酵素は、毛包と前立腺に多くあります。そのため頭皮のために飲む薬が、前立腺にも同時に作用します。
PSA:前立腺でつくられ血液中に出るたんぱく質です。採血で測り、前立腺がんを早く見つける検査に使われます。
男性型脱毛症の方の薄くなった頭皮では、毛包が小さくなり、DHTも多くなっています。フィナステリド1mgは米国で男性型脱毛症の治療薬として承認されており、頭皮と血液中のDHTを下げます。前立腺へのDHTの刺激が減ると、PSAも低く出ます。18~41歳の男性が1mgを12か月飲んだところ、PSAの平均は0.7から0.5ng/mLに下がりました*。
米国FDAが承認したプロペシアの添付文書に基づく内容です
若い方はもともとの値が低いため、差は小さく見えます。年齢とともに元の値が上がると、同じ割合でも下がる幅は大きくなります。健診結果の「基準範囲内」だけを見ていると、本来の値がわからなくなります。
薄毛治療薬でPSAが低く出るしくみ
PSAが下がる幅と時期
PSAが下がる幅と時期
40代・50代の男性では、1年ほどでPSAが半分近くまで下がります。薄毛のある男性355人をフィナステリド1mgと偽薬に4対1で分けた研究では、48週後に40代で40%、50代で50%下がりました。偽薬の40代はほぼ変わらず、50代は13%上がりました。この結果から研究者は、5mgを飲む方に使われてきた読み方(値をおよそ2倍として見る方法)を1mgにも当てはめるべきだとまとめています。
韓国の男性の診療記録では、少し違う姿が見えます。元のPSAが2.5ng/mL未満の1,379人では、全体で27.8%下がりました。79.3%は下がった一方、20.7%は変わらないか上がっていました。元の値が0.5ng/mL未満の方では、薬による下がり方ははっきりしませんでした。飲み始めて3~6か月でも26.0%下がっていました。
| 項目 | 米国のランダム化比較研究 | 韓国の診療記録の研究 |
|---|---|---|
| 対象 | 薄毛のある40~60歳の男性355人 | 元のPSA2.5未満の男性1,379人 |
| 薬と量 | フィナステリド1mgを毎日 | フィナステリド1.25mgを毎日、または低用量デュタステリド |
| 期間 | 48週 | 2002~2012年の診療記録 |
| PSAの変化 | 40代で40%、50代で50%低下 | 全体で27.8%低下 |
| 注意点 | 偽薬と比べた研究 | 過去の記録の分析で比較群なし |
PSAが下がる幅と時期
個人差はありますが、服用中のPSAは飲まない場合より低く出ると考えておきましょう。下がる幅は年齢や元の値で変わるため、1回の結果から本来の値を正確に計算し直すことはできません。
健康診断で伝えたい4つのこと
健康診断で伝えたい4つのこと
医師がPSAを正しく読むには、服用していることと、その期間が必要です。問診票に薄毛治療薬を「サプリメント」と書いたり、書かずにおいたりすると、低い値がそのまま基準範囲内として読まれます。次の4つを書いて持っていきましょう。
- 薬の名前と1日の量を書きます(フィナステリド1mg、デュタステリドなど)。
- 飲み始めた月と、これまで飲んでいる期間を書きます。
- 飲み忘れが多いか、少し前にやめてまた飲み始めたかも伝えます。
- 服用前に測ったPSAがあれば、その数値と日付を添えます。
飲み忘れが多いことも、PSAの結果に影響します。服用中は、低い値から再び上がったことが確認されたら、薬を飲んでいない男性の基準範囲内であっても評価が必要です*。
米国FDAが承認したプロペシアの添付文書に基づく内容です
ただし、1回高く出ただけですぐ次の検査に進むわけではありません。新たに上がったPSAは、測り直すと25~40%が元の範囲に戻るため、数か月後にもう一度測って確かめる流れがすすめられています*。2倍で読むか、いつ測り直すかは、健診の医師や泌尿器科で判断します。
米国泌尿器科学会の前立腺がん早期発見ガイドラインに基づく内容です
前立腺がんへの影響と、すぐ相談したい変化
前立腺がんへの影響と、すぐ相談したい変化
服用中にPSAが低いからといって、前立腺がんの心配がないわけではありません。薄毛治療薬の5倍にあたる5mgでは、前立腺がんがあってもPSAが下がることがあります。そのため1回の値よりも、低い値からの変化を見ます。
55歳以上の男性18,882人が、5mgか偽薬を7年間飲みました。前立腺がんが見つかった割合は、5mgで18.4%と偽薬の24.4%より低い結果でした。一方で悪性度の高いがん(グリソンスコア8~10)は1.8%と、偽薬の1.1%よりやや多くなりました。同じ参加者を18年まで追うと、15年生存率は78.0%と78.2%で、全体の生存率は両群でほぼ同じでした。
グリソンスコア:前立腺の組織検査で、がん細胞の悪性度を点数で表したものです。数字が大きいほど悪性度が高くなります。
これは薄毛治療薬の5倍の量での結果のため、1mgにそのまま当てはめることはできません。薄毛治療薬の服用中に次の変化があれば、次の健診を待たずに処方した医師へ速やかにご相談ください。
- 胸にしこりや痛みがあります
- 乳首から分泌物が出ます
- 性欲の低下や勃起しにくい状態が続きます
ソウル旅行の日程と受診のタイミング
ソウル旅行の日程と受診のタイミング
当日に静脈鎮静を受けた場合を除けば、薄毛の受診のために帰りの飛行機を遅らせる理由はありません。薄毛治療薬は効き方がゆっくりで、効果を感じるには通常3か月以上毎日飲む必要があります。
多くの治療は一度で大きく変わるのではなく、少しずつ変化していくものです。1回の来院は始まりで、治療の計画を終えたことにはなりません。帰国後に気になることがあれば、写真や直近の検査結果を添えてLINEでクリニックにご相談いただけます。胸のしこりや続く勃起障害など強い異常がある場合は、まず現地の医療機関を受診してください。
次の健診までに準備したい記録
フィナステリドを飲み始めた月と、その後のPSAの結果を日付順に1枚にまとめておくと、今回の値が低い値から上がったかどうかを健診の医師がすぐ確認できます。初めてPSAを測る方も、服用中であることを残しておくと翌年の結果と比べやすくなります。前立腺についての判断は健診の医師や泌尿器科で受け、薬の飲み方を変えたいときは処方した医師にご相談ください。薄毛の治療は自由診療(保険適用外)で、費用は治療内容により異なります。ソウル・明洞のロッテホテルソウル内、乙支路入口駅の近くにある STON Clinic にLINEでお問い合わせの際は、薬の名前と量、飲み始めた時期、直近のPSAの結果があるかを添えてください。
読んで気になることがあれば
相談を書く参考文献
- プロペシア(フィナステリド1mg)添付文書、PSAへの影響と注意点 — 米国FDA、2022 — U.S. Food and Drug Administration
- 薄毛のある40~60歳男性が1mgを飲んだ後のPSAの変化 — Lancet Oncol、2007 — PubMed Central
- 薄毛治療中の韓国人男性1,379人のPSAの変化 — J Urol、2017 — PubMed Central
- フィナステリド5mgを7年間飲んだ研究と前立腺がんの発見 — N Engl J Med、2003 — PubMed Central
- 同じ参加者を18年追った生存率 — N Engl J Med、2013 — PubMed Central
- 前立腺がん早期発見のためのPSA検査ガイドライン — 米国泌尿器科学会、2023 — PubMed Central
よくあるご質問
Q. 健診の数日前にフィナステリドをやめれば、PSAは元に戻りますか?
A. 数日やめればPSAが本来の値に戻るという根拠は見当たりません。飲んだりやめたりすると、かえってPSAが読みにくくなり、やめると薄毛治療の効果も12か月以内に失われます。自己判断でやめず、服用中であることを伝えるほうが安心です。
Q. デュタステリドを飲んでいてもPSAは低く出ますか?
A. デュタステリドもフィナステリドと同じようにPSAを下げます。韓国の診療記録の研究では、低用量のデュタステリドで31.1%、フィナステリドで25.1%下がりました。同じ系統の薬なので、問診票には薬の名前と量を同じように書いてください。
Q. PSAが基準範囲内なのに精密検査をすすめられたのはなぜですか?
A. フィナステリドの服用中は、低い値から再び上がったと確認されれば、基準範囲内でも評価の対象になります。薬が値を下げているため、同じ数字でも飲んでいない男性とは意味が違います。過去の結果を持って泌尿器科で説明を受けてください。
Q. PSA検査は何歳から受けるとよいですか?
A. リスクが平均的な男性は、45~50歳で基準となるPSAを一度測ることが考えられます。前立腺がんの家族が多い方や関連する遺伝子変異がある方は、40~45歳からの検査がすすめられています。薄毛治療薬を飲んでいるなら、初回から記録に残しておきましょう。
Q. フィナステリドは髪にどのくらいで効果が出ますか?
A. 通常、毎日3か月以上飲んでから効果が期待できます。効果を保つには飲み続ける必要があり、定期的に効果を見直します。PSAは飲み始めて3~6か月でも下がることがあるため、髪に変化がなくても健診では服用中と伝えてください。
Q. パートナーが妊娠中ですが、家に薬を置いても大丈夫ですか?
A. コーティングされた錠剤は、割ったり砕いたりしなければ、ふだん手に取っても有効成分には触れません。ただし妊娠中または妊娠の可能性がある女性は、割れたり砕けたりした錠剤に触れないでください。触れた場合は、すぐに石けんと水で洗ってください。
Q. 薄毛治療薬で性欲が落ちたら、やめるべきですか?
A. やめる前に、処方した医師に相談してください。1年間の臨床試験では性欲低下が1.8%、勃起障害が1.3%で、偽薬(1.3%、0.7%)よりやや多くなりました。やめた方と続けた方の多くで症状は消えましたが、中止後も続いたという報告もあるため、まず相談しましょう。
医療情報に関するご案内
この記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個別の診断や診療に代わるものではありません。 編集方針を見る

キム・ジャンジュ 首席院長
JANGJU KIM
キム・ジャンジュ医師は、明洞ロッテホテルのストーンクリニックの院長です。
経歴・学歴
- 현) 스톤클리닉 명동 롯데호텔 원장
- 경희대학교 의과대학 졸업
コメント